彼は彼女にとても優しいけれどそれは恋人だからで、私にも優しいとは限らない
恋に恋をすると言うのは、とても厄介な感情だ。最初は錯覚だっただけのはずなのに、そのことに自分で気づかずに好きになったような気になっていただけなのに、いつの間にか本当に好きになってしまう。だけど、やっぱりそれが恋に恋をしていただけで恋ではなかったのだと気づいたのは、長いこともう時間が経ってしまってからで、私はそれまでに失恋して泣いたこともある。
いちばん最初の事件は、ある年のバレンタインデー。友達に彼氏ができた…。最初に感じたのは漠然としたショックだった。恋も彼氏も経験がなくて干からびていた私は、学校で私と同じように笑い転げて、バカをやって、同じように男の気配もなかったように見えていた友達なのに、そんな彼女に彼氏ができたことが何だか無性にショックだったらしい。羨ましいでもないけど、負けたという気分だった訳でもないけど、ただただショックだったのだ。
他の友達は楽しそうに、嬉しそうに彼女のことを冷やかしていた。私はそもそも当時恋にも男にも興味がなかったので、友達の彼氏になった彼のことは存在すら知らなかった。ところが友達の彼氏ということで、彼が私達の友達グループの中に介入してくることが増えた。私の目に映るようになったのは…。友達をカノジョ扱いする彼と、男連れになった友達。恋愛モードの男と女はどうしたって年頃の女の目についた。
だんだんと私の頭はおかしくなり始めた。私は嫉妬した。友達に対してじゃなくて、彼氏に対してじゃなくて、自分の目の前にいるカップルというものに激しい嫉妬を覚えていた。べったりと友達に張り付くようになった。彼氏が友達とふたりきりになれないように画策したり、あんたの彼女である以前に自分の友達だから遠慮してよと彼氏に嫌みを言ったり。今思えば私が遠慮しろよっていう話だ。私はレズビアンではないけれど、まるでそう見えるくらい友達にベッタリになり、だけどそれとは裏腹で友達に彼氏を寄せ付けないのではなく逆に、いつの間にかふたりの間を、引き裂こうとするようになっていた。
自分も彼に、彼が友達を扱うのと同じように自分のことも扱ってほしかったのだ。今だからこうして冷静に言えるのだが、私は本当に、恋に恋をしていたのだ。しかし慣れない駆け引きや計算をした結果、正直に自分の気持ちをカミングアウトした私は彼にこっぴどく失恋したのだった。
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